優れた働き方戦略には、物理的スペース(bricks)、チームでの業務やコミュニケーションを支えるテクノロジー(bytes)、そしてそれらを結びつける文化(behaviors)の"3B"の要素がバランスよく組み合わされています。
リモートワークやハイブリッドワークを中心とした働き方への移行に伴い、物理的なデザインに焦点を当てていたこれまでの傾向が変わりつつあります。組織やチームがお互いの”行動”をより重要視するようになったことから、オフィスなどの物理的空間を中心としたアプローチは、もはや働き方・ワークプレイス戦略の構築プロセスにおける圧倒的な優越性を失っています。
この記事では、この3つの要素のほか、従来の方法(物理的空間/bricksを中心としたアプローチ)から新しい方法(行動/behaviorsを中心としたアプローチ)に移行する背景や、ハイブリッドワーク戦略の構築に向けて行動中心のアプローチを採る際によく聞かれる質問について触れます。
KEY TAKEAWAYS
- 働き方・ワークプレイス変革は適切なタイミングで建物環境を整備・提供することに焦点が置かれ、チェンジマネジメント分野は過小評価されている
- ハイブリッドワークへの変革において、オフィスなど建物環境はもはや従業員の帰属意識や働く意義の中心地ではない。変革の実行には「行動優先」のアプローチが必要
- ハイブリッドワークに基づいた環境であっても、オフィスは仕事の中心ではなく、働くこととは単に物理的に「オフィスにいること」にならない
3つの要素:
BRICKS, BYTES, AND BEHAVIOURS
働き方・ワークプレイス戦略は、これら3つの基本的要素の組み合わせです。そして、ハイブリッドワークにおいては「オフィスを中心とした共有スペース」という考え方から焦点を移す必要があります。そうすることで、これらの3つの要素をバランスよく組み合わせた戦略の構築が可能になります:
- 建物環境 ('Bricks'): 仕事が行われる物理的なスペース
- デジタルプラットフォーム ('Bytes'): コミュニケーションやコラボレーションを支えるテクノロジーインフラ
- 行動的な働き方 ('Behaviours'): 従業員間のつながりや関わり方をガイドする文化的・行動的要素
働き方・ワークプレイス変革の成功とは、各要素の役割を掘り下げながら定義し、新しい働き方戦略へのシフトを通じて継続的に見直しを行うことを意味します。しかし実際は、企業がこれらの要素のバランスを重視せず、働き方変革を新しいオフィスデザインの導入程度に止めてしまうことが多々あります。私たちが目指すべき目標は、この3つの要素をバランスよく組み合わせた戦略を開発することなのです。
働き方戦略を構築する8つのステップ
戦略の構築に向けた指針を見てみましょう。これは、組織が持つ目標と組織が実際に機能する社内構造を揃え、従業員の生産性とエンゲージメントの向上につなげるための設計図となります。
効果的な働き方・ワークプレイス戦略を構築する方法は次の通りです:
- 目標の定義:
まず、最重要の目標を明確に定義します。働き方戦略を通じて何を達成したいのか?コラボレーションの促進やリモートワークへの対応、またはイノベーションの促進など、明確な目標は基盤をつくります。 - データの収集:
現状の働き方やワークプレイスの使い方に関する分析を行います。例えば、従業員の活動パターンや好み、コミュニケーション方法などを測る働き方サーベイは強力なツールとなります。 - ステークホルダーの関与:
経営層や部門長、従業員など、主要なステークホルダーを戦略開発プロセスに巻き込みます。彼らの意見はチームや個人に沿った戦略を形成する上で貴重なものです。 - ”行動優先”のアプローチの構築:
ハイブリッドワークが戦略の一部として含まれる場合、優先すべきは「行動優先」のアプローチです。従業員が適切にコラボレーションやコミュニケーションを行い、効果的な時間管理を行う方法について望ましい行動を定義します。 - 物理的環境(オフィス)の設計:
専門家と協力し、特定の行動や活動パターンをサポートする物理的なワークスペースの設計を行います。これにはコラボレーションのためのオープンスペースや集中作業のための静かなゾーン、柔軟性のあるレイアウトなどが含まれます。デザインは組織の文化と価値観を反映・強化すべきものです。 - デジタルツールの活用:
シームレスなコミュニケーションや情報共有、リモートでのコラボレーションをサポートするデジタルプラットフォームを適切に選び導入します。これらのツールが働き方戦略の目標と一致し、望ましい行動を可能にするものであることを確認しながら進めましょう。 - チェンジマネジメント計画の策定:
働き方戦略における行動分野に対処するための適切なチェンジマネジメント計画を立てます。新しい働き方のコンセプトやその実装に向けたアプローチ、またデジタルツールに関するトレーニングを従業員に対して行い、新しい働き方に適応するためのサポート環境を構築します。ここでは変革をリードできる"チェンジチャンピオン"の任命を行います。 - 効果測定と戦略の修正:
戦略の効果を評価するためのKPIを設定します。従業員のエンゲージメントや生産性、コラボレーションなどの指標を測定します。フィードバックやデータの分析に基づいて定期的に計画を見直し修正をかけます。
ハイブリッドワークの時代において、物理的な環境('bricks')はもはや従業員の帰属意識や働く意味の主要源ではありません。これからの働き方変革の成功には「行動優先」のアプローチが必要なのです。
物理的環境 ('bricks')、 テクノロジー ('bytes')、そして文化・行動 ( 'behaviours') をシームレスに統合することの重要性について、V+Cスウェーデンのカントリーリードを務めるジョナス・テーランダーソンは三脚を例に説明しています:
"物理的な共有空間と豊富な選択肢を備えた新しい働き方では、成功に必要な3つの要素が存在します。それは、変革を具現化・モデル化するリーダーシップ、変革の目標に合わせて調整された物理的空間、そして望ましい変革に対する意欲に沿った行動分野でのサポート、の3つです。
私たちは一本足の椅子に座ることはできず、二本の足ではふらつき危険です。安定性を作り出すのは三本の足です。そして、その中でも行動のサポートに最も焦点を当てる必要があります。"
Jonas Thelandersson
Veldhoen + Company | Senior Consultant