今年の初めに、私たちはいわば水晶玉を取り出して働き方の未来を占おうと試みました。私たちは未来について壮大な予言をするような企業ではありません。30年以上にわたってお客様が直面する課題に一緒に取り組んできた経験を活かして、お客様が長期的な回復力とアジリティを構築できるよう支援したいとただ望んでいるためです。実際にお客様やパートナー企業から、2023年に組織はどのようなアプローチを採るべきか、また「ニューノーマル」がどのようなものになるかについて展望を示すことが期待されていました。
そこで、V+Cの特長である好奇心を持ちつつ、「信頼は責任の上に成り立つ」という揺るぎない信念のもと、予測した展望を振り返り評価できる形でのみ未来を予測しようと私たちは考えました。早いもので今年も半分が終わり、この半年を振り返ってこれまでに学んだ教訓をパート1としてご紹介します。
2020年から2021年にかけて、新しい働き方や「仕事」のあり方、その他の多くの働き方が盛んに論じられました。しかし私たちのお客様の多くが実施していたことは、パンデミックというかつて誰も直面したことのないスケールの大きな課題と状況に対する、良い意図に基づいたものでありながらも後手後手に回るポリシーの寄せ集めでした。新しい年を迎えるにあたり、弊社はそういった施策と距離を置いて「大胆な実験」に挑戦するようお客様に提案しました。これは文字通りに大掛かりな実験を行うというわけではありません。むしろ「何か違う試みをする」という意識的な第一歩が必要という意味です。
この「大胆な実験」というキーワードは、弊社の日本やシンガポールのチームにとって「大胆」という言葉が特に誇大に聞こえ、今も働き方において未知の要素が多いことを考えると、多少の怖さや躊躇を感じる言葉と捉えられました。また、お客様からも「実験」という言葉はあまりに科学的で冷たい感じで、人間中心の働き方のコンテキストでは意味が不明瞭だという意見もありました。そこで、私たちは「実験」の意味を正確に整理することにしました。弊社による大胆な実験を簡単に定義すると、変革には次の要件が求められるということです。
それでも依然として「大胆とはどういうことか」という質問を受けることもありました。 「大胆」かどうかは、結局は各企業の状況と文化によって異なります。ごく簡単に言うと、何か実験によって従業員が(たとえパイロットグループであっても)何か根本的な方法でこれまでの「居心地の良い場所」の外に出る(これまでの働き方から変革を起こす)必要になったとき、自身の新たな働き方として定着する「大胆なスイートスポット」が見つかる、ということです。特に日本では、シニアコンサルタントの岸田 祥子がハイブリッドワークを試験的に実施していた多数のお客様と話したところ、そのほとんどが以前の働き方に戻っていました。それらのお客様に一致したのは「期待していた『大胆なスイートスポット』が見つからない」というものでした。それに伴い、日本のV+Cチームは今年どのようにしてお客様に働きかけて、ハイブリッド環境で効率良くかつ快適に働くためのチームの合意を構築し、ハイブリッドワークの成功の基礎となる重要課題を検討するよう促すかという課題に重点的に取り組みました。
北米でも、大胆なスイートスポットの発見が重点的な取り組みの対象となりました。2019年からSun Lifeのプロジェクトを担当しているシニアコンサルタントのZoe Chenは、最近の経験を振り返り次のように語っています。「大胆な実験のいくつかは従業員や社会に対する公然の約束となり、移り変わる状況で新たな課題が生じても後戻りしにくい状況となりました。当然ながら、そうした『公約』の多くは新型コロナウイルス感染症に関連するものでした。現在私たちはパイロットプログラムを通じて公約の長期的な実現に向けて取り組んでいます。」 興味深いことに、こうしたコロナ禍の施策に対する一部のステークホルダーからの反発は、「机上」の戦略をどのように実現し、またどのように公約を達成していくかを学ぶ上で重要でした。
同時に、新たな実験を通じて興味深い課題に直面しました。一例として、PwC Canadaでは、新たな空間構成に基づくオフィス空間をパイロットとして試験的に導入しました。このパイロットプログラムは、社内のさまざまなグループやそのリーダーが「パイロット」の目的や意図について異なる捉え方をしたために、社内で予想よりも大きな取り組みへと発展しました。シニアコンサルタントのKristin Reedはプロジェクトについて次のように語っています。「PwC Canadaでは、プロジェクトに『パイロット』という名前やイメージを与えることで、果てしない意思決定プロセスによってアイデアが行き詰るような事態を減らす狙いがありました」。こうすることで、特にリスク回避を優先する企業では完璧さの追求を防ぎ、どんなアイデアも歓迎されるオープンな環境が育まれ、プロジェクトや実装が最初から完璧でなくても受け入れられやすくなります。V+Cは実際に新しいワークスペースのオープンに喜びを感じました。その写真は、パイロットにもプロトタイプにも全く見えませんでした。
私たちの経験から言えるのは、パイロットを効果測定が可能な実験として設計している組織は常に学び続け、プロジェクトの成功を収めるということです。今年の初め、私たちは「 大胆な実験を開始する前に、成功の測定基準と測定メカニズムを明確化しておくことが不可欠」と先日の記事で提案し、実際にV+Cの多くのチームは従来から、空間占有率やキャパシティ、出社パターンを把握する目的で利用状況調査(ユーティリゼーションスタディ)を実施してきました。しかし、このデータは状況の一部を示すにすぎないことだと認識しています。北米チームのZoeは「利用状況をエスノグラフィック調査および他のワークプレイスデータと組み合わせることで、職場でどのような従業員ペルソナをサポートすべきかをチームがより深く理解できるようになった」と語っています。私たちは以前からそうしたペルソナのいくつかを認識していましたが、ここ数年で人々の生活と働き方に大きな混乱が生じたことで、いくつかの新しいパターンも出現しました。成功を収めるには、それらすべてをサポートすることが必要不可欠なのです。
V+Cの展望において常々強調してきた重要な点は、「大胆」とは大規模という意味ではないということです。Zoeが語った 1 つの経験談では、チームやリーダーが、今年行ったすべての小さな意思決定の効果をより強く意識するようになったと言います。その効果とは、社内で行なった大胆な実験が社内チーム(特にプロジェクトを実行するチーム)にとって非常に漸進的で若干スローペースに感じられたとしても、外部からはきわめて大胆に見えたのです。この経験から私たちは、プロジェクトで一緒に働くチームに対し、忍耐力を持って実験の目標とその測定方法を明確にし、外部から大胆に見える効果を過小評価しないよう注意するようにしています。
本記事の続編としてパート2記事を9月に公開予定です。記事では、1月にお伝えした展望の2つ目について触れます。ご興味のある方は画面右上にある「アップデートを購読する」ボタンをクリックしてニュースレターの登録し、V+Cの最新情報やニュースレターをお見逃しのないようしてください。