オランダ・フェンロー市
人々の交流のためのサステナブルな空間
Case Study Overview − 概要
Case Study Overview − 概要
建築的および文化的ランドマークとしての市庁舎
組織: フェンロー市役所
場所: オランダ・フェンロー
オフィス面積:13,500 ㎡
従業員数: 950+
コンセプト:人々と環境への付加価値の創造
Background and Aims − 背景
Background and Aims − 背景
大きな決断は2009年に行われました。
オランダ・フェンロー市役所は、約1,000人の職員のために新しい施設を必要としていました。その目的は、それまで市内のさまざまなオフィスに分散していた職員を1つに集約することで、彼らが協力し合える環境をできる限り提供することでした。
しかし、目的はそれだけではありません。市は、持続可能な付加価値を人々に提供し、サーキュラーエコノミーの原点である「ゆりかごからゆりかごまで(Cradle to Cradle: C2C)」の原則に基づいた働く環境も望んでいました。その意図として、従業員だけでなく、市民もこのプロジェクトのメリットを得られるようにし、将来的により良いサービスを受けられるようにすることも視野に含まれてしました。
さらに、新しい市庁舎はその周辺地域にも付加価値を提供することが期待されていました。
課題
フェンロー市役所とのコラボレーションを進める中で、私たちはある難題に直面しました。それは、市役所とともに革新的な働き方を定義し、決められた予算内で複数の異なるニーズとプロジェクト目標を調整しながら、同時に1,000人の職員に対し今後の働き方変革に向けたサポートを提供する、というものでした。
アプローチ
このような大規模なプロジェクトには、すべての参加者・職員にとってプロジェクトの目的を明確に伝えるビジョンが必要です。そこで、私たちは多くのインタビューやワークショップ、サーベイを含む共創プロセスを通じて、このビジョンを市議会と共に開発しました。
このビジョンこそが、新しいオフィスの建設や行動変容のプロセスに関わるすべてのステークホルダーたちの軸になりました。C2Cの原則に沿った建物の構築や、活動ベースの働き方(ABW)の促進の基盤となったのです。
その過程で、私たちは職員が将来どのように働くかを検討し、そこに働く人々の活動とニーズに基づいて適切なオフィス空間のコンセプトを開発しました。職員の柔軟なハイブリッドワークを促進しつつ、フェンロー市民に良質なサービスを提供できるようにするために、私たちはワークショップやトレーニング、キーノートスピーチなどを通じて仕事のプロセスの見直しとデジタル化の準備をサポートしました。
このプロセス全体を通じて、私たちはプロジェクトチームの「右腕」としてだけでなく、建築家としての役割も果たしました。
結果
プロジェクトの結果、フェンロー市は新しい市庁舎というハコだけでなく、緑豊かで目を惹く外観を持つ新たなランドマークとしての存在感も得ることができました。ここには、職員や市民、すべての訪問者がみな快適に感じられる会議スペースが設けられています。
フロントオフィスとバックオフィスの分離や、オープンデザインの市民サービスエリア、また予約システムなどを含めた環境は、市民へのおもてなしだけでなく、職員にとってもより多くの安全性や安心感を得られるつくりになっています。
またABWの概念に基づき、職員はいつ、どこで、誰と働くかを決定する自主性を持っています。特定のプロジェクトに使用できる部屋や電話ブース、会議室、カジュアルなコラボレーションのための共用エリア、人間工学に基づいたワークプレイス、レストランなどが備えられ、すべての職員が現在の仕事のニーズに最も適した働く場所を選ぶことができます。その結果、仕事へのアプローチの仕方が改善され、従業員の満足度が向上するだけでなく、市役所内の業務プロセスが迅速かつ効率的にするという大きな貢献を果たしました。
そして特筆すべきは、このような成果が以前よりも小さな建物で実現されていることで、C2Cの原則に基づていることからもオランダ国内でも最も健康的な建物の一つとなっています。
C2Cに基づいた建物とABWに基づいた働き方の具体的な成果は、次のような項目で表れています:
+ 従業員満足度が90%に向上
+ 職員が柔軟性とより良いワークライフバランスを享受
+ 部門の分断解消によるチームワークとコラボレーションの向上
+ 病欠日数の減少
+ 行政および市民サービスのデジタル化
+ エネルギー消費量は以前の市役所と比較し1/3に減少
+ 建物による自家発電能力
+ 建物内の空気は外気よりも清潔
+ 建物が半径500メートル以内の微細粉塵とCO2の30%を吸収